16イン/20アウトのUSBオーディオインターフェイス

ドラムレコーディングをしたらわかった
Arturia AudioFuse 8Preの圧倒的な魅力

ドラムレコーディングをしたらわかったArturia AudioFuse 8Preの圧倒的な魅力

2019/12/15


アートリアから最大16イン/20アウトのUSBオーディオインターフェイス「AudioFuse 8Pre」が発売されました。エンジニアの小嶋"ojjy"淳一朗氏に本機をドラムレコーディングで使ってもらったところ、その音質の良さだけでなく、利便性の高さも見えてきました。

取材・文:本多理人 写真:小貝和夫
協力:畑中李奈、ミュージックスクールウッド

arturia audio fuse 8pre

8chの高品位なアナログオーディオイン/アウトを備えるオーディオインターフェイス/ADATエクスパンダー。接続はUSB-Cで、USB-A端子を持つPCと接続するための変換ケーブルを同梱している。最新世代の24ビットAD/DAコンバーターを搭載し、サンプリングレートは最高192kHzまで対応。サウンドメイクに役立つプラグインエフェクト/インストゥルメントのコレクション「AudioFuse Creative Suite」が付属する

arturia audiofuse 8pre

フロント

arturia audiofuse 8pre rear

リア

プロユースまで意識して細かいところが作られています

小嶋

小嶋"ojjy"淳一朗】東京・中野にあるBUNGEE STUDIOのレコーディングエンジニア。高校卒業後に渡米し、LAのSound Master Recording Engineer Schoolsでエンジニアリングを学ぶ。帰国後は数多くの作品に携わり、ポップスからヘヴィなバンドサウンド、ライブミックスや映画のサントラまで、幅広く手掛けている。

PADをブーストモードにするとゲインを持ち上げることができる

──まず、本機を手に取った時の第一印象から教えてください。

ojjy:意外と重量があって、しっかり作られているなという印象でした。電源部もアダプターが抜けないようにロックできますし。プロユースまで意識して、細かいところが作られていますよね。

──デザインも特徴的ですよね。

ojjy:ラックに取り付けるためのオレンジの耳が付いていて、これを下に向けると、机の上に置く際の足としても使えるんですよ。こういうデザインも含めて、色々と考えて作られています。ツマミやボタンのレイアウトもわかりやすいですね。ch1/2だけはフロントにも入力端子があって、ギターやマイクの抜き差しが素早くできるから、宅録でも使い勝手がいいと思います。しかも、リアにもch1/2のインプットがあるので、ラッキングして裏に配線しておくこともできます。ラインなのかマイクなのかを自動認識してくれる点もいいですね。

──実際に使ってみると、便利なポイントがたくさんあることに気づきますね。

ojjy:そうなんです。例えばPADスイッチは、PADモードとブーストモードを切り替えられるんですよ。通常のPADはレベルを落とすだけですけど、ブーストモードにすることで逆にゲインを上げることができるんです。出力の低いマイクを使う時とか、音量の小さな音源を録る時、例えばストリングスのルームアンビエンスを録ったり、ダイナミックマイクでウィスパーボイスやアコギのアルペジオを録る時に重宝すると思います。

audiofuse 8pre

ch1とch2は、フロントとリアの両方に入力端子が用意されている。両方同時に接続した場合、フロントの入力が優先される

本機をもう1台追加すれば16インまで拡張することができる

──今回は試しに、AudioFuse 8Preでドラムを録っていただきました。

ojjy:アビッドPro Toolsに48kHz/32ビットで録りましたが、AudioFuse 8Pre自体の内部処理は24ビットです。マイクプリのキャラクターは素直で、歪みにくいクリーンな印象でした。ゲインのレンジは広めです。ゲインはもともと高めですけど、PADを入れればドラムの大音量にも対応できます。各チャンネルにファンタム電源、PAD、フェイズのスイッチがあるので、HAとしての基本的なスペックは満たしていますね。

──各チャンネルにフェイズスイッチが付いているというのは珍しいですね。

ojjy:マルチマイクでドラムを録ることを想定しているのかな。今回の試奏では、ハイハット、キック、スネアのトップ、スネアのボトム、タム、フロアタム、オーバーヘッド(L/R)という8本のマイクを立てました。その場合はフェイズスイッチで、スネアのボトムの位相を反転させるのが基本です。あとオーバーヘッドに関しては、部屋の形状や距離にもよりますけど、今回は位相を反転させた方が正しい位相で録れました。

arturia audiofuse 8pre

PADを長押しすると赤く点灯し、ゲインを上げるブーストモードになる。また、位相を反転するフェイズスイッチを各チャンネルに搭載

──S/Nはいかがでしたか?

ojjy:S/Nも良くて、すごく静かでした。面白いのが、全チャンネルのS/Nの測定値を記載したスペックシートが同梱されているんですよ。それを見ると、チャンネルごとにゲインの値とかが少しずつ違っていて、これを確認すれば、ステレオのゲインをよりシビアに合わせたい時とかに参考になります。ただ、ゲインのツマミはカチカチと刻む方式ではないので、左右を完璧に合わせるのは難しいかもしれません。とは言え、スタジオのコンソールでもわずかな誤差はあるので、最終的には耳で聴いて合わせるしかないですね。今回はゲインを絞りきって左右を合わせました。

──解像度やレンジ感はいかがですか?

ojjy:レンジ感は広くて、周波数特性はかなりフラットです。すごく太く録れるわけではないですけど、キックの胴鳴りやローエンドまでキッチリ録れます。ハイもよく伸びていますね。今回録音に使った部屋は、少し詰まった感じに聴こえる特性があるんですけど、その感じまで捉えられていました。“場の中での音”を忠実に録れますね。リハスタに持って行って録るのにも使えますよ。もう1台追加すれば、16インまで拡張できますし。

──それも本機の魅力ですね。

ojjy:初めてのオーディオインターフェイスとして導入するのもいいと思いますし、手持ちのオーディオインターフェイスにADATインが付いていれば、8ch分の追加HAとして本機を導入するのもいいと思います。あと、ワード端子も付いていて、クロックをロックできるのも大きいですね。ADATでつなぐだけでなく、クロックのズレをなくした方が、音質は確実に良くなりますから。

audiofuse 8pre

ヘッドホンアウトは、標準ステレオプラグと3.5mmステレオプラグが用意されている。2人同時にモニタリングすることが可能だ

audiofuse 8pre

ADAT端子は2系統搭載。96kHzでの録音時は、8ch分の信号を送るのにADATアウトが2本必要になるからだ

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