SATOちがMUCCを脱退、プロのドラマーとしての活動を引退

MUCC、SATOち(Dr)ラストステージが10月2日と3日にザ・ヒロサワシティ会館大ホール (茨城県立県民文化センター)で開催!

MUCC、SATOち(Dr)ラストステージが10月2日と3日にザ・ヒロサワシティ会館大ホール (茨城県立県民文化センター)で開催!

2021/10/10

MUCC「MUCC TOUR 202X 惡-The brightness world」

写真:Susie

MUCC「MUCC TOUR 202X 惡-The brightness world」

 

MUCC「MUCC TOUR 202X 惡-The brightness world」

 

MUCC「MUCC TOUR 202X 惡-The brightness world」

 

MUCC「MUCC TOUR 202X 惡-The brightness world」

 

MUCC「MUCC TOUR 202X 惡-The brightness world」

 

MUCC「MUCC TOUR 202X 惡-The brightness world」

 

MUCC「MUCC TOUR 202X 惡-The brightness world」

 

MUCC「MUCC TOUR 202X 惡-The brightness world」

 

10月2日、セミファイナルのステージ。ライヴが中盤に差し掛かろうというタイミングのMCタイムで、ツアーの主役はいきなり表情を歪ませた。泣きそうになる顔を必死に腕で隠そうとするのだが、40過ぎた男がそんな子供みたいな泣き方するか?と思わず突っ込みを入れてしまうほど、それは不恰好で恥ずかしい姿だった。「え、もう泣くの?」と、逹瑯も驚きながらけたけたと笑っている。「今からこんなんじゃ、明日はどうなっちゃうんだよ」——。でも、そんな男だからこそ、この24年間、彼はたくさんの人に愛されてきた。悲しみとか痛みとか苦しみとか、そんなネガティブな歌ばかりを発表してきたバンドだけど、そこにはいつも彼の不器用な笑顔とまっすぐな優しさがあった。現体制ラストとなるツアー、MUCCの地元で開催された2デイズは、そんなバンドならでは光景がなんども繰り広げられる泣き笑いに満ちたフィナーレだった。
 
ドラマーSATOちが2021年春のツアーを最後に脱退することを発表したのが去年12月。そこを起点に年の瀬の武道館、ベスト盤「明星」のリリース、そして5月6日にフィナーレを迎えるラストツアーで、バンドは現体制にピリオドを打つ予定だった。しかし新型コロナウイルス感染拡大の影響によってツアーは延期と中断を余儀なくされ続け、およそ5ヶ月のアディショナルタイムを挟んで迎えることになったツアーファイナルで、ついに彼がバンドを去るのだ。
 
オープニングSEから1曲目「惡 -JUSTICE-」とともにラストライヴの幕が上がる。4人で鳴らす音がいつもと違って聞こえるのは、観る側に変なバイアスがかかっているからなのか、それとも彼らの感情の表出によるものなのか。そんな理性と感情が錯綜した状態のまま演奏は「CRACK」へ。オーディエンスは声の代わりに持参した打楽器を鳴らしたり、ヘッドバンギングなどで激しく応戦している。その光景にはもちろん声が出せないもどかしさや、バンドを去るドラマーへの思い——「ありがとう」という言葉すら投げかけることが出来ない息苦しさがあった。声が出せない中で行われた「娼婦」のコール&レスポンスや「G.G.」のシンガロングでも、それは同じだった。
 
シリアス一辺倒の「アイリス」のパフォーマンスを終えると、逹瑯が我に返ったように口を開く。「気合が入りすぎちゃって、自分が鬼気迫る感じになっちゃって、危ねえ危ねえ、そういえば今日は楽しもうと思ってたんだって(笑)」。さらに彼は湿っぽい空気を変えようと「今日はあと何回泣くんだろうね」とジョークをSATOちに振ったものの、すでに本人は目を合わせることもできない状態。しかし、その後披露された「スイミン」には、4人が音を合わせることの歓喜に溢れかえっていた。楽しむことでしか前に進めないことを、バンドが改めて思い出したように見えた。
 
いつもは客席やオーディエンスに寄り添うことが多いYUKKEが、何度も後ろを振り返りながらSATOちの様子を伺っていた。ミヤの荒々しいギターソロは心の慟哭を聞いているようだ。余計な感情を断ち切るように、逹瑯は歌うことに全神経を注いでいる。「パノラマ」「落陽」「アルファ」とセンチメンタルな曲が続いても、ドラマーがその感傷にいちいち引っ張られても、ステージには楽しむことを忘れず前へ進もうとする4人。その光景はまさにMUCCというバンドの歴史そのものだと思った。
 
楽しいことよりも辛いことが多いバンドだ。苦しさや耐えがたい痛みを通り抜けた先にしか、明るい光はなかった。楽しむことを求めなくなったら行き止まり。そうやって今までずっと続いてきた。しかし、SATOちは限界を迎えたことで、別の道を行くことになった。そんな4人が今、ステージで次々と襲い掛かる感傷と格闘しながらも、その先にあるはずの光を探していた。堪え難いリアル、その先にある笑顔を求めて——。「すごく……いいライヴが出来ているような気がします」と自画自賛した逹瑯の言葉に、恭しい拍手が起こった。
 
ライヴ後半、前日と同じように「スーパーヒーロー」や「My WORLD」で顔を歪ませながらスティックを振るSATOち。それにつられてなのか、次第に3人もこみ上げてくる感情に抗えない様相を呈してきた。演奏は自分たちに向けられたものになり、オーディエンスはもはやそんな4人を見守るだけしかできない。「20歳の時にそんな関係性は捨ててきた」「友達でいたかったらとっくバンドは解散してた」と、取材ではその関係性について何回も否定されてきたけど、やはり彼らは今でも「友達」だった。そのことを本編ラストの「スピカ」が物語っていた。
 
そして計7曲、2回のアンコールを経て4人のラストツアーは幕を閉じたかのように見えた。別れの歌「明星」は4人のMUCCを締め括るに相応しい曲だったし、「これからは俺、夢烏(ムッカー/MUCCファンの呼称)になるんで」というSATOちの挨拶も彼らしかった。脱退が決まってから今日までの長かった道のりもこれで美しく終わりを告げるかと思いきや——。
 
鳴り止まない拍手の中、再び幕が上がると、そこにはジャージ姿の3人とボウリングのピンの被り物に身を包んだSATOちが。さらには彼らのバンド仲間たちの姿もある。まさかの思わず客席から漏れてしまう笑い声。そして「MUCC体操」というラジオ体操もどきの特別版が披露される。さっきまでの涙を返せ!とクレームを入れたくなるような演出だが、彼らはこの日を迎えるずっと前からわかっていたのだろう。最後は笑って別れたい、でも、それが出来ない自分たちのことを。だからこんな蛇足をあえて用意していたのだ。
 
泣き笑いに忙しかった3時間。4人もきっと慌ただしかったことだろう。辞めるメンバーがここまで泣いてるラストライヴは初めて見た気がするが、それでも湿っぽい気持ちにはならず、清々しい気持ちでエンディングを迎えられることが出来たのは、4人が24年前と変わらず、別々の道を歩むことになっても繋がっていようと思っているからだ。
 
翌日、すでに彼らは新体制によるシングル「GONER/WORLD」を11月5日にリリースすること、さらにツアーも発表された。MUCCというバンドワゴンは止まらない。どんなに辛い道のりがあろうと、その先にある光や笑顔を求め、突き進んでいく。そういう宿命のバンドなのだ。
 
テキスト:樋口靖幸(音楽と人)

MUCC「MUCC TOUR 202X 惡-The brightness world」
2021年10月3日(日)
ザ・ヒロサワ・シティ会館
SETLIST
 
01. 惡 -JUSTICE-
02. CRACK
03. 神風 Over Drive
04. 娼婦
05. G.G.
06. 海月
07. アイリス
08. スイミン
09. Friday the 13th
10. SANDMAN
11. パノラマ
12. 落陽
13. アルファ
14. スーパーヒーロー
15. DEAD or ALIVE
16. 目眩
17. 前へ
18. My WORLD
19. スピカ
 
<En1>
1. 九日
2. 家路
3. 優しい歌
4. ハイデ
 
<En2>
1. 1997
2. 蘭鋳
3. 明星
 
<En3>
1.MUCC体操特別版
 
 
≪アーカイブ配信≫
■MUCC TOUR 202X 惡-The brightness world』アーカイブ配信
10月3日(日)茨城公演 〜10月10日(日)23:59まで
【販売期間】10月10日(日) 20:00まで
【配信サイト】
<ニコニコ生放送> https://live.nicovideo.jp/watch/lv331243392
<イープラス Streaming+> https://eplus.jp/mucc20210501/st/
<LiveFrom EVENTS(海外向け)>  https://livefrom.events/collections/mucc
 

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