打ち込みサウンドとビッグバンドのコラボレーション

角松敏生『Breath From The Season 2018~Tribute to Tokyo Ensemble Lab~』インタビュー

角松敏生『Breath From The Season 2018~Tribute to Tokyo Ensemble Lab~』インタビュー

2018/04/25


角松敏生がビッグバンドとコラボレーションしたニューアルバム『Breath From The Season 2018~Tribute to Tokyo Ensemble Lab~』を4月25日にリリースする。今回のアルバムでは、自身の楽曲やカバー曲をスウィングやラテン、サルサなどビッグバンド・アレンジでリメイク。ここでは、コンピュータ・プログラミングの打ち込みサウンドと生の管楽器との融合や、自身の楽曲のスウィング化について聞いてみた。

取材:斎藤一幸(編集部)
 

──まずは、今回のニューアルバム『Breath From The Season 2018~Tribute to Tokyo Ensemble Lab~』の基となった『Breath From The Season』からお聞かせください。当時(1988年)初めて聴いた時は最先端の打ち込みにフルバンドがミックスされた衝撃的なサウンドでしたが、業界内ではどのような評価だったのですか。

角松:僕自身はよく知らないです。当時は好きなことをやり倒していただけでセールスとかそういうことにぜんぜん興味が無くやってた時代なので。ただ自分自身としては商業的に良いペースでリリースできた時代ではあったのでメーカーも割と何でも言うことを聞いてくれた頃でしたね。角松まわりの企画なら通しときゃ何枚か売れるだろうみたいな。だから僕はそれに乗っかってマニアックなものをいっぱいプレゼンしていて『Breath From The Season』もその中の一つでしたね。

──当時の角松プロデュースの中でもこれはかなり異色なイメージがありました。

角松:あれは基本的には数原(晋)さんのアルバムなので。やっぱりスウィングを基本としたビッグバンド・ジャズが中心なんですよ。ただそこをエレクトリックにしていこうとか、例えばキッド・クレオールとかサヴァンナ・バンドとかがやったみたいにディスコビートとビッグバンドを組み合わせるみたいな。当時は80年代だったので生ドラムが中心だったけど、僕がやったのは80年代後半でプログラミング・サウンドが勃興した後だったわけです。なのでプログラミング・サウンドによるビートにビッグバンドを乗っけるっていう漠然とした企画を提案したんですよね。でも僕が責任編集をしたのは1曲目の「Lady Ocean」とラストの「Morning After Lady」だけです。

──あの当時『Breath From The Season』の楽譜が出ましたよね。僕も持ってましたけど。

角松:出てたらしいですね。実は今それが話題になってまして、その楽譜が出てたことを誰も知らなかったんですよ。それがすごく貴重なんですよ。実はね「Nica's Dream」を今回やるにあたって、おおもとのアレンジでやりたかったんですけど譜面が失われてて誰も持ってなかったんです。前田(憲男)さんも持ってない数原さんも持ってないって。その楽譜があったら、前田さんに譜面起こし直ししてもらうこともなかったんですよね。

──この楽譜はちゃんと移調譜で採譜されていて当時POPSやFusionしか打ち込んだことがなかった身としては譜面の解析で苦労しました。またグルーブの処理も難しくてブラスセクションを譜面通りに打ち込んでもリズム体とグルーブが違うのでとても聴けたものじゃなかったですね。

角松:あれを打ち込むのは大変だ。

──今回のニューアルバム『Breath From The Season 2018~Tribute to Tokyo Ensemble Lab~』ですが、リメイクすることになった経緯を教えてください。

角松:ライナーノーツにも書いたんですけど、アロージャズオーケストラという今年60周年になる大阪のビッグバンドがあって、5~6年前に「角松さん一緒にコラボ出来ませんかね」というお話をいただきましてね。アローさんはいろんなシンガーとコラボしてて、色んな楽曲のスウィング化みたいなものをずっとやっていて。例えば「知床旅情」とかをカッコいいスウィングにしてるんですよ。それでなぜか僕の所にもお話が来たんですけど。

──そもそもスウィングはお好きだったのですか。

角松:僕はJAZZは好きで聴くけど、自分はやれるほどの身分じゃないです、みたいなのがずっとあって。想像できなかったんですけど、再三お誘いを受けたんで、ちょっとビルボードライブで1回だけやってみるかと。それも大阪だけだし。それで自分の中でビッグバンド化されそうな楽曲をいくつかピックアップしてお願いしました。その中に今回収録されている「RAIN MAN」や「SHIBUYA」があったんです。
 

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角松敏生
Breath From The Season 2018
~Tribute to Tokyo Ensemble Lab~

2018年4月25日(水)発売



角松敏生 Breath From The Season 2018 ~Tribute to Tokyo Ensemble Lab~

■【収録曲】
01. Lady Ocean
02. SHIBUYA
03. I’LL CALL YOU
04. RAIN MAN
05. Have some fax
06. Gazer
07. Can’t You See
08. AIRPORT LADY
09. Nica’s Dream
(Cover:Horace Silver)
10. TAKE YOU TO THE SKY HIGH
11. A Night in New York
(Cover:Elbow Bones & The Racketeers)
12. Morning After Lady

【初回生産限定盤】 BVCL-884/5 価格:3,600円(税抜)/ 3,888円(税込)
■The Way Of New Album『Breath From The Season 2018』Blu-ray付■
【通常盤】 BVCL-886 価格:3,000(税抜)/ 3,240円(税込)
※初回盤/通常盤共通:セルフライナーノーツ付

TOSHIKI KADOMATSU
Performance 2018 “BREATH from THE SEASON”

5/20(日)オリックス劇場・大ホール
16:45/17:30 サウンドクリエーター 06-6357-4400
5/22(火)日本特殊陶業市民会館・中ホール
17:45/18:30 アスターミュージック 052-931-3621
5/26(土)トークネットホール仙台・大ホール
16:45/17:30 ジーアイピー 022-222-9999
6/ 1(金)福岡市民会館
17:45/18:30 BEA 092-712-4221
6/ 9(土)大宮ソニックシティホール
16:45/17:30 ディスクガレージ 050-5533-0888
6/16(土)広島NTTクレドホール
16:45/17:30 ユニオン音楽事務所 082-247-6111
6/17(日)岡山市立市民文化ホール
16:45/17:30 ユニオン音楽事務所 082-247-6111
6/22(金)レザンホール(塩尻市文化会館)
17:45/18:30 レザンホール 0263-53-5503
6/23(土)沼津市民文化センター・大ホール
16:45/17:30 イーストン 055-931-8999
6/29(金)中野サンプラザ
17:45/18:30 ディスクガレージ 050-5533-0888
6/30(土)中野サンプラザ
15:45/16:30 ディスクガレージ 050-5533-0888

全席指定:¥9,800(税込)
※全公演共通

『TOSHIKI KADOMATSU Performance 2018“Tripod Ⅸ”』
2017年7月14日(土)15日(日)15日開場:18:00/開演:18:30
16日開場:16:00/開演:16:30
料金:指定席:¥8,700(税込) 合唱席:¥8,700(税込) 立見:¥8,500(税込)
会場:軽井沢大賀ホール 住所:〒389-0104 長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢東28-4
お問い合わせ:角松敏生コンサート事務局 03-6804-2313(平日16:00~18:00)

角松敏生(かどまつとしき)
プロフィール
※本名同じ
1960年 東京都出身
1981年6月、シングル・アルバム同時リリースでデビュー。以後、彼の生み出す心地よいサウンドは多くの人々の共感を呼び、時代や世代を越えて支持されるシンガーとしての道を歩き始める。また、他アーティストのプロデュースをいち早く手掛け始め、特に1983年リリースの 杏里「悲しみがとまらない」、1988年リリースの 中山美穂 「You're My Only Shinin' Star」はどちらも角松敏生プロデュース作品としてチャート第1位を記録、今だスタンダードとして歌い継がれている。1993年までコンスタントに新作をリリース、いずれの作品もチャートの上位を占める。年間で最高100本近いコンサート・ツアーを敢行、同時に杏里、中山美穂、らのプロデュース作も上位に送り込んだ角松だったが、当時の音楽シーンへの疑問などに行き詰まった彼は、この年の1月27日、日本武道館でのライヴを最後に自らのアーティスト活動を『凍結』してしまう。しかしこの“凍結期間”は、逆に「プロデュース活動」をさらに多忙にさせるといった結果となり依頼が殺到し、プロデューサーとしての手腕を存分に発揮した。また、1997年にNHK“みんなのうた”としてリリースされたAGHARTA(アガルタ :角松敏生が結成した謎の覆面バンド )のシングル「 ILE AIYE(イレアイエ)~WAになっておどろう」は社会現象ともいえる反響を集め大ヒット。1998年2月の<1998 長野冬季オリンピック>閉会式では自らAGHARTA のメインヴォーカルとしてその大舞台に立ち、今や国民的唱歌「WAになっておどろう」が披露され、この映像は全世界に向けて映し出された。『凍結』から約5年、角松敏生は遂に自身の活動を『解凍』することを宣言。1998年5月18日、活動を休止した同じ日本武道館のステージに再びその姿を現した。その「He is Back」コンサートのチケットは発売直後にソールド・アウトとなる。翌年リリースしたアルバム『TIME TUNNEL』はチャート初登場第3位を記録し、変わらぬ支持の大きさを実証してみせた。その後2作連続TOP10入りを果たしたシングル「君のためにできること」、「Startin‘/月のように星のように」、沖縄・アイヌと音楽の旅を続けた『INCARNATIO』、再びスティーヴ・ガッドを起用した角松サウンドの集大成アルバム『Prayer』、大人の遊び心に溢れた『Summer 4 Rhythm』『Citylights Dandy』など、作品ごとに新しいコンセプトで挑むアルバムやライヴDVDなど、コンスタントにリリースを重ねている。またリリースに平行して、20周年、25周年、30周年のアリーナクラスの記念ライヴや全都道府県ツアー、大型ホールからライヴハウスまで、様々な形態で精力的にコンサートを行い、 2012年春、30周年を記念したリメイク・ベストアルバム「REBIRTH 1」をリリース。
2014年3月角松の幅広い音楽性が1曲に組み込まれた「プログレッシブ・ポップ」アルバム「THEMOMENT」が話題となった。
2016年デビュー35周年を迎え、記念ライヴを横浜アリーナにて開催し、大盛況の内、幕を閉じた。リミックスアルバム『SEA BREEZE 2016』リメイクアルバム『SEA IS A LADY 2017』はオリコン初登場4位を獲得。この作品は第32回日本ゴールドディスク大賞『インストゥルメンタル・アルバム・オブ・ザ・イヤー』受賞した。その妥協を許さないスタンスとクオリティで常に音楽シーンの最前線で活動をしている。また2002年と2005年には映画音楽を手がけ、また自身が役者として芝居の殿堂でもある下北沢・本多劇場のステージに主役として立つとともに音楽、映像監督を同時に務めるなど、新たなチャレンジも行っている。
2018年デビュー40周年へと向かう今、制作、ライブとますます精力的に活動を続けている。


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