──実際、アルバム用に書き下した新曲には、すべてに携わっていますもんね。これらの楽曲は、いつ頃から制作をスタートさせたんですか？

Crystal Kay：2年前から徐々に始めていました。『Shine』から時間があいたこともあって、そろそろスタジオに入りたいなって思ったんです（笑）。それで自分からUTAさんやプロデューサーさんにプリプロしたいって連絡したんです（笑）。その際に思ったのは、アルバムを想定した時、「サクラ」や「Lovin’ You」という既存の曲だけ並べると全体的に優しい印象になるなということ。でも、私としては20周年に向けて、もっとパンチがある曲やパフォーマンスができる曲が欲しかった。だから、新しく作る楽曲に関しては、ぜんぶ強めな感じで行きたいって言いました。それにリリース・タイミングが夏に近かったので、久しぶりにサマー・アンセム的な楽曲も入れたかったんです。そう思って作ったのが「Summer Fever」なんです。ただ、制作は始めていたものの、その時点では歌詞もメロディも仕上がっていなかったので、実際にレコーディングが始まったのは4月でした。

──ということは、Crystal Kayさんが携わった楽曲に関しては、すべてゼロから作家さんたちと一緒に作っていったということですね。その作業は楽しかったですか？

Crystal Kay：楽しかったです。自分から発信しているし、それがどんどん形になっていったので。しかも、その段階からライヴのことも考えていたので、この楽曲をライヴでやったら、きっとこんな感じになるんだろうなっていうのもイメージできたんです。だから、制作しながらワクワクしていました。

──Crystal Kayさんは、もちろん歌うことも好きなんでしょうけど、音楽を作ること自体も好きなんですね。

Crystal Kay：作詞は今でも苦手なんですけど（笑）、コンポーズするのは好きなんだなと思いましたし、結構曲は自分の中から湧いてきましたので今回やってみてちょっと自信もついてきました。でも、やっぱりUTAさんやOkajima Kanataさんのような方が一緒にやってくださるからこそスムーズに行くんだなとも思いましたけど。UTAさんは今引っ張りだこのコンポーザーですけど、凄く作るのが早いんです。コードはこういう感じがいいですってお願いすると、私がメロディを考えている間に、もうトラックを完成させてくれている。しかも、それが的確なんです。本当に凄いな思いましたし、相性って大事だなって思いました。

──そうやって自分の想いや感覚を詰め込んだ楽曲は、やっぱり仕上がったときに達成感がありますか？

Crystal Kay：ありますし、純粋に好きです（笑）。自分の子供みたいな感覚。「かわいいでしょ、うちの子！」という感じです（笑）。

──そのアルバムは坂詰美沙子さんが作詞と作曲を手がけた「幸せって。」で始まります。この楽曲はNHKドラマ10『デイジー・ラック』の主題歌。そういう理由もあるとは思いますが、女性の心理が見事に描かれていますよね。楽曲を聴いていて、何度も「その通り！」って思いました（笑）。

Crystal Kay：私もです（笑）。だから、やっぱり坂詰さんは凄いなって思いました。メロディも歌詞も、聴いていて、すごく引っかかるんです。最初にデモを聴いたときは、ちょっとキラキラすぎるんじゃないかなって思ったんです。でも、実際に歌ってみたり歌詞を読んだりすると、「うわっ！」って思う部分がたくさんあった。とてもキャッチーだし、歌詞なんて、最初のフレーズから現代の人たちにはグサッとくると思います。ちゃんとリアリティがあるところもさすがだと思います！。

──きっと多くの女性が共感するであろう不安や焦りを描きつつ、自分は自分でいいんだよというメッセージもちゃんとある。そこがすてきですよね。

Crystal Kay：そうなんです。ハッピーハッピーな楽曲じゃないんですけど、最終的には〈幸せって競うモノじゃない〉と言ってくれている。そういうふうに外から言ってもらうことで、「そうだよね！」と思えますから。

──ついついみんな誰かと自分を比べちゃうんですよね。

Crystal Kay：そうだと思います。その比べるというのは、この楽曲のキーワード。特にアラサーくらいになると、周りに結婚していたり、ママになっている友だちが増えてきて、そうじゃない人は「これでいいのかな？」と思いがちになるのかもしれませんが、人生って人それぞれ。それが1曲の中にうまく入っているんです。

──だから、聴くと元気になれますよね。自分を認められるというか。

Crystal Kay：本当にそうなんです。凄くいい曲だと思います。坂詰さんとはポイントポイントでご一緒しているんですけど、いつもすばらしい楽曲を作ってくださいます。

──Crystal Kayさんのボーカルも、優しいというよりは全編を通して張りがありますよね。それは聴いてくれる人の背中を押したいという想いからですか？

Crystal Kay：そこも今の私が目指しているところなんです。たぶん、今の自分ってネクスト・ステージに入っているんです。だから、今までのような歌い方では弱い気がしています。優しくキレイにというだけでは、心に刺さらないし、言葉も入って来ないんじゃないかなと思ったんです。だから、歌い方に関しても、もっと強さや芯を持とうと思いました。

──確かに、「幸せって。」の歌は、聴いていてガツンと響きます。

Crystal Kay：そういう歌を歌うことは、私の課題なんです。自分の内部から生まれてくるような歌を歌いたい。自分自身がもう子供ではないので、聴いていて安心できるというか、この人の声には芯があって頼れる気がするという歌を歌うことが必要になってくると思うんです。聴いてくれる人の年齢も上がってきていると思うので、歌にもウソがあると受け入れてもらえない気がします。だから、これからもっとこういう歌を歌っていきたいです。

──凄く潔い歌だなって思いました。きっとたくさんの人に届くと思います。ちなみにMVは、どんなテイストになっているんですか？

Crystal Kay：この楽曲の世界観をストレートに表現した感じです。メインの女の子がいて、私は妖精じゃないですけど、見えない存在として彼女を見守っているんです。最初は、その子が友だちの結婚パーティの帰りでちょっと落ち込んでいるんです。でも、考え方を変えて、もっと前向きに物事を捉えるようにするといいことに出会えるようになる。そういうストーリーになっているんです。スタッフさんは、私の表情が凄く優しいと言っていたので、結構女の子っぽさが出ているんじゃないかと思います。