第56回NHK紅白歌合戦出場曲

スキマスイッチ「全力少年」を解説
【ヒット曲から学ぶ作曲テク その4】

スキマスイッチ「全力少年」を解説【ヒット曲から学ぶ作曲テク その4】

2015/10/01


こちらのページではJ-POPのヒット曲を例に、その曲に隠された作曲テクニックを紹介する。「Aメロ/Bメロ/サビ」のそれぞれからオイシイ箇所をピックアップしているので、これを読んで曲作りに役立ててほしい。今回はスキマスイッチ「全力少年」を取り上げて解説していく。

 

 参考曲:スキマスイッチ「全力少年」

 「ドラム、ベース、アコギ、ピアノ」の4リズムに、ストリングスやホーン、ハープがプラスされたゴージャスなアレンジが楽しい、スキマスイッチの代表曲。「Aメロ→Bメロ→サビ」というオーソドックスな曲構成だが、サビに向かって音の厚みを増していくワクワクする伴奏アレンジは、ポップスのお手本だ。また歌メロでは、小節の頭の表拍から始まるフレーズと、シンコペーションや1拍目以外から歌い出す、前のめりのフレーズを組み合わせて、心地良いドライブ感を出している点にも注目!

 

 解説その1:イントロ&Aメロ

※KEY=CメジャーまたはAマイナーの調で解説しています。
 

イントロの進行を反復すると思わせて、違う方向に展開

 イントロは、Aメロやサビのコード進行を元にして作ることが多いだろう。この参考曲では、4小節ひと回りの「C→Dm7→Em7→F△7」というコード進行を繰り返した後にAメロに入る展開になっているが、Aメロの出だしのコードがイントロと同じ「C」なので、一瞬同じコード進行かと思わせるが、実際には違う方向に進んで発展させている。 このようにイントロからAメロにスルッと入る曲の場合は、イントロとAメロで多少コード進行を変えてやることで、曲を印象的に聴かせられるので試してみよう。


 「C→Dm7→Em7→F△7」(ド→レ→ミ→ファ)と徐々に上昇するイントロに対して、「C→Em7→F△7→Fm 6」(ド→ミ→ファ→ファ)と3小節目で「ファ」に到達するAメロは、4小節目を「Fm6」というマイナー調にして切なさを出している


 

 解説その2:Bメロ

サビの解放感を高めるためのマイナー調の演出がキモ

 ベース音が下降していくというBメロでは定番の進行だが、スタートがメジャーではなくマイナー調の「Fm」(ファ/ラ♭/ド)で、それに合わせて3小節目を「Dm」(レ/ファ/ラ)ではなく、ラを半音下げた「Dm7(♭5)」(レ/ファ/ラ♭/ド)にしているのが特徴だ。これによりメジャー調に上がれずに、抑えつけられているような鬱屈した雰囲気を作り出している。これがBメロ後半からサビに向かって解放されていくための下準備になっているというわけだ。ダイアトニックコード以外をうまく取り入れて、曲の表情をコントロールしている点に注目!


 キーがCメジャーの時の、サブドミナントである「Fコード」を使ったマイナー変換をしている例。ギターを弾きながらメロディを鼻歌で歌ってみると、同じメロディでもかなり印象が変わることがわかる


 

 解説その3:サビ

サビの解放感を高めるためのマイナー調の演出がキモ

 参考曲のサビの出だしは歌詞が韻を踏んでおり、メロディの方もシンコペーションを使った特徴的なリズムを反復して歌うことで、強く印象に残るフレーズを作り出している。歌ものの楽曲では、高い音域やダイナミックなフレーズを使って盛り上げる以外に、この曲のように耳に残るアクセントを使ってフレーズを作るテクニックが非常に効果的だ。歌詞のある曲に限らず、たとえインストの曲であってもリズムや音程の動きを工夫したフレーズをうまく入れていくという形で応用できるだろう。


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