桑田~サザンの色合いを強く感じさせる上質のポップス

桑田佳祐「愛しい人へ捧ぐ歌」を解説
【ヒット曲から学ぶ作曲テク その2】

桑田佳祐「愛しい人へ捧ぐ歌」を解説【ヒット曲から学ぶ作曲テク その2】

2015/10/01


こちらのページではJ-POPのヒット曲を例に、その曲に隠された作曲テクニックを紹介する。「Aメロ/Bメロ/サビ」のそれぞれからオイシイ箇所をピックアップしているので、これを読んで曲作りに役立ててほしい。今回は桑田佳祐「愛しい人に捧ぐ歌」を取り上げて解説していく。


 参考曲:桑田佳祐「愛しい人に捧ぐ歌」


 2012年に発売されたベストアルバムに収録されている曲で桑田~サザンの色合いを強く感じさせる上質のポップスだ。いい意味でコード進行やアレンジに奇抜な点がなく、オーソドックスにまとめながらも個性を感じさせる点はさすがだ。♯や♭がたくさん付くキーにしたり、突飛な転調をして注意を引かなくても、表情豊かな曲は作れるという好例だ。そんな中にも、気の利いたコード進行やグッドなメロディがちりばめられているので、ストレートな曲を作りたい人は研究してみよう。


 解説その1:Aメロ

※KEY=CメジャーまたはAマイナーの調で解説しています。

素直に解決せずに、じらすように動く7~8小節目に注目!

 Aメロの前半のコード進行は、「ド→シ→ラ→ミ」と下降するベースラインにダイアトニックコードを乗せた定番の進行だが、4小節目をそのまま「ソ(G、またはAm on G)」にせずに、「ミ(Em)」にして予想を外し、注意を引いている点に注目してほしい。これは、後半に向けてベース音の上昇を始めるきっかけにもなっている。 さらに、ここから「ファ(F)→ソ(G)」と動いて、素直に「F→ G→ C」と解決すると思わせて、そこから「Em7→ Am7」とマイナーに寄り道しているところがポイントだ。これは一段落すると思わせてまだ続く、「じらしの演出」といえる。


Aメロのコード進行は、「1〜4小節」と「5〜8小節」という2つのセクションに分けて、7&8小節目でマイナー調に進み、次の展開を予測させている

 解説その2:サビ前半


歌い出しに9thや7thの音を使って柔らかな印象にする

 ポップス系の歌メロを美しく聴かせるテクとしては、歌い出しの音をコードトーン(Cなら「ド」)にするのではなく、3rdやメジャー7th、9thの音からメロディを作っていくと雰囲気が柔らかくなる。 譜例は参考曲を元にした歌メロで、9thを積極的に盛り込んでいるが、他に「9th→高い3rd」、「メジャー7th→高いルート音」など、下からしゃくるようなメロディを盛り込むと耳に残るようになる。また、1&2小節目と3&4小節のように、音程を変えながらフレーズを反復すると流れるような動きが出る。

 解説その3:サビ後半


マイナー6thで影を感じさせて、循環コードでさわやかに解決

 サビの後半の8小節は、“マイナー調からさわやかなメジャー調へ”という、“影から光”を感じさせるストーリー性のある展開に注目だ。 前半の4小節はマイナー調で、6thや7thを多用した複雑な響きだが、後半の4小節は一変してシンプルな循環コードにすることで、さわやかさを強調している。特に影を演出する前半の「Gm6」がポイントで、6thの音がマイナーコードをさらに印象深い響きにしているのだ。 さらに、4小節目にCメジャーのサブドミナントマイナーにあたる「Fm6」を使って、切なさをグッと強調している点も素晴らしい。

 1~3小節目の「Em」と「A 7」をつなぐコード進行の例。「Gm6」の音が少しマイナー調を感じさせ過ぎるようなら、構成音が同じながらも落ち着いた印象になる「Em7(♭5)」にコードチェンジしてもいい


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